アーク溶接 第90話 ビード外観を考える(1)  担当 高木柳平

2017年06月19日

=ビード外観不良 アーク不安定、ビード切れなど=


 本話よりビード外観品質とその状況についてどのような観察眼をもって判断していけばよいか、種々のビード外観画像をお見せするなかで、それらに対する筆者のコメントを参考にして頂き、皆様の溶接品質評価につなげていただければ幸いです。

 最初に写真090-01のアーク不安定画像を見て下さい。良好なビード外観とは真逆の不良ビードです。溶接方向は画面の左から右でパン、パンと不安定状態がビード最終まで続き終わっています。途中にワイヤが半溶け状態で残っており、このようなビードは「stub bead or stubbing bead」と若いころ教わりました。

 いわゆる木の切り株のようです。要するにワイヤがその先端から溶けるのではなく、チップ先端部からも溶断しています。また、これらのビードはこの不良状態が発生する直前まで良好な溶接がなされていて、突如このような不良外観を呈する場合が殆どです。では、なぜ発生したか? 推測してみましょう。

 外観からはワイヤ送給量(cm/min)がバラツキ、アーク長さ(アーク電圧)が乱れた状態です。

 このような場合はまずチップ不良です。穴詰まり、先端穴拡大などでワイヤ送給不良、チップ先端部給電不良の結果生じます。次にアーク電圧異常が考えられます。アーク電圧設定が異常に低く、電圧を上げることができないなどアーク長さを保持できなくなった場合です。また、ワイヤ突き出し長さが過大、アース接続不良などが考えられます。要するにアーク安定を構成する①ワイヤ送給、②アーク電圧のどちらか、or一方が不良で適正を保てなくなったため生じた不良です。



 写真090-02にビード不良の一例を示します。両ビードはともに芋虫が這っているような盛り金状態でアークエネルギー不足になっている。片側のスタート部には半溶け状態のワイヤが残りアーク電圧が低すぎることを示している。このようなマグ短絡移行では100msec程度の比較的短い期間何度もアーク切れを繰り返しながら進行するとこのようにビード幅の狭い、凸状で、しかもビード長手方向に不連続なビード不良外観を呈しやすい。盛り金は十分なためワイヤ送給は問題なさそう、アークに適正なエネルギー(ここでは電圧)が与えられない不良と考えられ、突き出し長さが過大の場合もありますが、主因の多くはチップ不良です。

 以上の2例に示す不安定アークによるビード不良を含め、通常発生しやすい主なビード不良要因とその対応について概要を表090-01にまとめてみました。ビード外観不良対策への考え方は何度も触れているアーク溶接三つの基本第4話第48話参照)に沿って、しかも対象溶接工程にある溶接電源、送給系、給電系、ワイヤ、ガス、ロボットを含め条件指示全般にわたります。しかし、難しく考えることはありません。ビード外観不良が現れる以前は良好なビードを置くことが出来ていたからです。どの点が変化点になったかを自工程より探し出せば解決できます。そのような考えで表090-01ビード不良要因と対策に関し参考にして頂ければ幸いです。



 次話では、少々踏み込んで「ビード切れとその対応」について説明を加えます。

以上。

№ A090

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