アーク溶接 第48話 溶接条件の選定 考え方(1)  担当 高木柳平

2016年03月28日

  本話より主題を「溶接条件の選定」に移します。溶接条件の選定と一口に言っても広範囲なため考え方として溶接条件選定を支える必要な予備知識、事前準備について筆者が多くの自動車部品メーカー殿に赴き見学、アドバイス、講習など行う中で気付いた諸点についてコメントをします。実際の溶接設備がどのように企画・設計・製造・試運転され生産準備を整えたか、整えられるべきかを予め知ることはとりわけ重要です。ここでは設備と言っても機械、電気、制御などには専門外のため触れません。あくまでアーク溶接技術、品質につながる観点からです。

  とくにアーク溶接設備専門メーカーによる設計・製作であれば経験豊富でしょうが、ノウハウの持ち出しを敬遠するためなどの理由で自社設計、製作の部品メーカー殿にあってはアーク設備特有の留意点を見落とす場合がありそうですので参考になれば幸いです。

  考え方の基本は、第6話の「アーク溶接三つの基本」をイメージしながら進めることが肝要です。048-01にアーク溶接設備立ち上げに関する溶接技術側面からのチェックポイントを示します。

 

アーク溶接 AZ048-01

▲ 図048-01 アーク溶接条件選定に当たって・・・・必要な予備知識、事前準備

 
① ねらい
品質不良を流出させたら社の命取りの時代です。
  「安全第一」
の次に「品質不良ゼロ」を掲げました。また、品質不良が発生する背景には「ヒューム、スパッターの悪影響」があります。さらに電気、エア、水、ガスなど「省エネ、省スペース」にも取り組みが欠かせません。

② 溶接品(ワーク)への着眼点を磨く。
  設備立ち上げ段階から、ワークが必要とする品質特性を満足させるため個々の溶接で「見落とし」はないか事前検討し、新設備に反映させることです。

以下にそれらの対象事例を2,3示します。

-1 母材継手形状と母材姿勢
  溶接ではしばしば溶接架橋性という表現をします。パイプ部品が溶接対象になると片フレア、あるいは両フレアと呼ばれる継手形状になります。これらの継手を有するワークを下向姿勢で溶接すると溶接金属が片側に寄り架橋性を害することがあり、ワイヤ狙い位置がシビアになります。緩和策としてはワークを傾斜させてトーチ前後角を後退角サイドにして「湯の先流れ」に留意しながら施工することが望ましいと考えられます。

-2 袋構造体の溶接
 
3方向が立体的に囲まれた袋構造体の部品がしばしば溶接対象になります。このようなワークの場合スパッターの発生が懸念されます。ガス流量制御などの機能を設備に持たせたり、トーチ後退角の採用により袋構造体の奥側から開放側へトーチ走行させることが望ましい場合があります。

-3 丸パイプなどの中空構造体の縦継ぎ溶接
  ボンベの縦継ぎ溶接、テーパーポールの溶接、プレスで折り曲げ角形に縦継ぎ溶接する場合などにしばしば顕われるアーク不安定は磁気吹きと称され、己の溶接電流で生じた磁力でアークが乱される現象。これらの構造体を溶接対象とする場合は事前に治具設備に磁気吹き対策を行う必要があります。

②-4 重ねすみ肉亜鉛メッキ鋼板と重ね代
  通常の重ねすみ肉亜鉛メッキ鋼板の溶接では、重ね代が少なくとも5mm以上あるものとして説明されます。その場合は重ね部の亜鉛メッキ部を極力温度上昇させない条件が推奨されます。しかし重ね代が2mm程度に狭くなると温度上昇させても溶接部と反対側に亜鉛蒸気のガスが抜けてブローホール感受性が低下します。また、二枚重ねで下板の出代(mm)が2mmなどと短い場合は伝熱が行き止まり逆に下板亜鉛メッキ母材の温度上昇につながりブローホール感受性を高めたりします。重ね代、継手形状によって溶接結果を左右されるので事前に溶接部をしっかり観察しながら、事前トライすることが求められます。

  次回も続編として「溶接条件の選定にあたって必要な予備知識、事前準備」について記します。

以上。

 

№ A048

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