アーク溶接 第27話 溶接ワイヤとその取扱い(4) 担当 高木柳平
2015年08月03日
1次側コンジット ~ 送給装置入口まで
溶接ワイヤ送給における着目点は線ぐせ良好なワイヤをスムーズに送給することです。「1次側コンジット~送給装置入口間」における課題を以下に記します。なお既に説明した1次側コンジットの引き回し方については第7話、23話を参照ください。
パックから引き出されたワイヤは透明傘頂部の引き出し口を経てワイヤ検出器(含む二段矯正器)、一次側コンジットへと導入されます。皆様の溶接現場を歩いていて見掛ける不適合事例は図027-01にみるような透明傘の破損品を無理に使用していたり、透明傘のパック留めバンド金具がなく倒れていたり、二段矯正器を適用していても矯正ローラからワイヤが外れてキズがつく状況になっている場合などにしばしば出会います。このような不適合状況には敏感に反応し対処して下さい。
それでは当社商品の1次側コンジットライナーであるGF(Good Feedability)ライナーについて説明します。「一次側ライナー」への課題は以下の諸点が挙げられます。
① 送給装置からみると送給ワイヤは引き張り側にあるのでライナーの内径はある程度大きい方が好ましく、GFライナーの標準寸法は内径Φ4×外径Φ8と内径を大きく厚肉にしています。
② GFライナーは図027-02にみるように透明性があり、ライナー内部におけるワイヤ表面汚れ有無の観察が可能。従来品はコンジットに被覆が施されていたので観察不可。
③ 従来の重量のある被覆コンジットではロボット動作による搖動が激しく、揺れが止まりにくい。これらの揺れによる微振動が給電性に悪影響を及ぼしスパッターが増加し、アークを不安定にする。GFライナーは高強度樹脂チューブのため軽量で搖動を抑えやすい。
④ GFライナーはチューブ内面がテフロンと同じく潤滑性に優れ、送給ワイヤ表面をキズつけにくい。
⑤ GFライナーは、専用MCナイロン継手により容易に取付けが可能で、任意の切断長さのライナーを適用できます。GFライナーの納入長さ仕様は10、30、50&100mと品揃えしてあります。
次に送給装置入口側に取り付ける3点矯正器に ついて紹介します。現状4ロール式送給装置への3点矯正器取付けはオプション品扱いの場合が多い。これは4ロール式ではワイヤ送給性、給電性の確保が容易 だろうという推測の上での判断と考えますが、この考えは大きな間違いです。4ロール式を適用すると送給ワイヤは輪径の大きな、いわゆる直線に近い線ぐせに なる傾向にあり、Φ1.2ワイヤと自由給電式トーチの組合せで言えば図027-03にみるようにΦ700~800の輪径を必要としますが3点矯正器が付属していなければ所要輪径を得ることはできません。
4ロール送給装置には3点矯正器は必需品と考えて下さい。当社の3点矯正器の外観を図027-04に示します。取り付けの際には矯正量(mm)と矯正方向を確認して設定して下さい。滑らかなワイヤ送給性を日常的に確保するためには専用のワイヤ表面潤滑剤の助けを借りる場合があります。
当社では専門メーカである株式会社日本科学エンジニアリング様と共同開発した「洗浄と潤滑」を同時に満足させるLLコンジットクリーナー(図027-05)および、それらを併用する商品「フキトール」(図027-06)をパックワイヤ引き出し部あるいは3点矯正器入口部に取り付け送給性改善に役立てて頂きたい。
以上。