アーク溶接 第42話 シールドガスとその取扱い(3) 担当 高木柳平
2016年01月25日
シールドガスの種類と選択(2)・・・ビード形成性への影響
溶接ビード形成性に求められることは、ビード外観が美麗であり、 ビード幅が適正に広く、スパッター付着が少ないことなどが挙げられる。これらの点に関し適用されるガスは、溶滴移行形態にも大きく影響を及ぼすためビード 形成性への影響は大きくまた溶接コストも考慮して、CO2 100%, マグガスAr+20%CO2、ミグガスAr+2~5%O2および三元系としてAr+CO2+O2などが代表的である。
ビード形成性には周知のように溶接電源、溶接ワイヤおよび溶接条件などの諸要因の影響も大きいがここではガスの種類がビード形成性に及ぼす影響について図042-01に従って概要を述べる。
(1)炭酸ガス(例;CO2 100% )
図042-01の№1にCO2 100%条件のビード外観を示す。CO2溶接特有のビード外観を呈し、必ずしも美麗な外観ではない。スラグ付着が多く、ビード幅両端部にビラビラ状のものが認められる。これはCO2ガスによるアークの集中度が増大し、溶融池へのアーク力などが増加した結果と考えられ、周囲へのスパッター飛散も多くなる。また、余盛もやや高く、総合評価として劣るビード外観になっている。
(2)炭酸ガス+酸素(例;CO2 + 10%O2)
図042-01の№2にCO2+10%O2条件のビード外観を示す。現行ではCO2+O2の混合ガスは殆ど使用されていないが、シールドガスのビード形成性への影響を理解する上で大変役立つと考え加えることにします。CO2+O2の混合ガスでは、酸素リッチなため、溶接金属が強い酸化雰囲気にさらされFeO-SiO2-MnOの生成が進行し、台形型の平坦なビード形成となる傾向にあります。CO2ガスと同様O2ガスもアクティブガスとして作用するため、アークを冷却し、集中度をアップし、スパッター発生を増加させる傾向にありますが、10% O2以下の混合比ではそんなにスパッター発生は顕著ではありません。CO2+O2ガスは大変特長あるビード外観を形成することを記憶にとどめておいて下さい。
(3)アルゴン+炭酸ガスの混合ガス
図042-01の№3にAr+20%CO2条件のビード外観を示す。CO2 100%に比べ、アークの集中力が緩和され、分散するので、穏やかな溶滴移行となる。一方、溶融池へのアーク力、その他の作用も小さくなるので搖動も少なく、安定的なビードを形成する。
(4)アルゴン+酸素の混合ガス
図042-01の№4にAr+2%O2条件のビード外観を示す。ミグガスの中でもO2(%)が比較的少ない混合ガスによるビード外観例です。酸素量が少ないためビード両端のクリーニングゾーンが形成されることが特長で、かつ部分的にアーク不安定によるビード波目の不整が発生している。
(5)アルゴン+炭酸ガス+酸素
図042-01の№5にAr+20%CO2+3%O2の 三元ガス条件によるビード外観を示す。酸素ガスを3%混合しているので、アークの集中度はマグガスに比べアップ。一方、酸素効果でビード幅が広がる傾向に ありますが、反面スパッターはやや発生しやすくなる。なお、これらの三元ガスは主に亜鉛メッキ鋼板の溶接に適用されるが、通常の普通鋼板の溶接に対しても 酸素添加の効果がビード形成性の改善をもたらし、溶接速度向上にもつながります。
次話では引き続きガスの及ぼす溶け込み形状への影響について説明します。
以上。