品質管理技術 第9話 製造原価の「みえる化」について 担当 津守正己
2015年06月15日
Ⅰ はじめに
コラム第1話で「みえる化は改善の原点です!」の話しをさせて頂きましたが、今回は、製造現場で発生する製造原価とそのみえる化について一緒に考えてみましょう。
Ⅱ 製造原価とは
製造原価と一口にいっても種々あるが、今回はアーク溶接工程を例に現場で管理すべき原価とそのみえる化方法に絞って考えてみたい。
まず、管理すべき原価の1つ目はアーク溶接設備本体
① 電力使用量
② シールドガス使用量
③ ワイヤー使用量
④ コンタクトチップ使用量(消耗品)
⑤ ノズル使用量(消耗品)
2つ目に治具関係
① 電力使用量
② エアー使用量
③ その他 消耗品(ピン・シリンダーetc)
3つ目にオペレータの仕事
① ワークセット工数
② 設備起動工数
③ ワーク搬出工数
④ 完成品箱詰め工数
⑤ その他付帯作業(頻度と工数)
補足 :
実作業 ・・・ アーク溶接では、火花が飛んでいる時間。
(組立作業では、インパクトレンチが回転している時間。)
付随作業 ・・・ ワークセット、搬出
付帯作業 ・・・ コンタクトチップ交換、ノズル清掃等
仕事している時間(正味作業時間) = 実作業時間 + 付随作業時間 + 付帯作業
一般的にオペレータの作業と治具関係については工程単位で管理されているが、電力・ガス等については工程単位で管理されている現場は少なく、多くは工場単位でドンブリ勘定の現場が多いと思われる。その場合、改善してもその効果を算出するのが困難である。
Ⅲ 製造原価をみえる化するには
① 電力・シールドガス・エアーの台当り使用量
工場単位の使用量から少なくとも課単位工程単位へ、出来れば溶接機1台単位に積算計を設置し、ワーク1台当たりの使用量を把握する。
ここでシールドガスについて少し詳しくみてみると一般的にエコノダイヤル等で溶接の初めに出るガス量の制御と、1分間に流れるガス量がアナログでみえる化 されているが台当りに使用されるガス量の積算計はない。例えば、当社のレギュラーシステムではシールドガス量を最適化すると同時に台当りの使用ガス量(積 算計)も見る事が可能である。このレギュラーシステムは、ガス使用量の低減はもとより、CO2削減による環境改善を図ることができる。その点を考慮し導入を決定する会社も増加傾向にある。また、ガス量の適正化による、スパッタ量の低減効果も注目されている。
② 各種消耗品 コンタクトチップの交換頻度と工数及びノズル清掃頻度と交換工数
台当りワイヤー使用量については、簡単に取り付け可能な測定器で原単位(1ワーク当りの使用ワイヤー量m)を整備し、設計図面値のビート長と実際のワイヤー使用長の差異について検証しておく事を提案したい。
③ 何といっても製造原価に大きく影響するのは品質
第3話で工程内不良「0」への挑戦で 話したが不良品をつくってから手直ししたり、廃却したりの品質損失コストは会社の信用にも影響し、手直しは当たり前となってしまっては従業員全体の士気も 上がらない。不良率のグラフでなく日当たり・時間当たりの不良個数をみえる化し、「損失コストを全員で改善する」・・・ との意識付けが大切である。
Ⅳ 最後に
製造原価のみえる化には初期設備投資が必要なものもあるが、みえる化による従業員全員の改善活動によってすぐに回収出来る範囲であり、何といっても改善活動によって育つ人財は本当の財産となる。
№ Q009
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