アーク溶接 第72話 トーチの設定と亜鉛メッキ鋼板の溶接(2) 担当 高木柳平

2016年12月19日

  前話に示しました071-01に関するコメントを072-01にまとめて掲載しました。ここでは亜鉛メッキ鋼板を対象としていますが普通鋼板の、例えば油脂分が表面に付着している場合などにも大なり小なり適用できますので応用範囲の広い考え方です。

  隙間メッキ層に過剰に熱を加えない(発生源対策)条件と溶融金属に亜鉛蒸気を侵入させない、亜鉛蒸気の煙を逃がす条件を夫々、ワークの継手形状(ここでは重ねすみ肉継手を対象とする)、ワーク姿勢とトーチ設定の組合せからみた場合のコメントを表072-01に記してあります。この中から特長的なケースをピックアップして説明を加えます。

 AH072-01

※ 図044-02表示

 

1)下向き重ねすみ肉溶接071-01&072-01の各F1~F3参照)

F2*45°傾斜角にすると亜鉛メッキ鋼板では隙間のメッキ層を多く溶かす可能性が大となる。隙間があればあるほどその中にアーク炎が入り込みメッキ層を溶融させ、蒸気化し溶融金属に侵入型のブローホールを生成しやすくなる。

  アーク炎を入り込ませなくするために垂直線からの傾斜角を30°程度に小さくし隙間メッキ層をむやみに溶かさないよう設定することが望ましい。

F3* 狙い位置についても隙間メッキ層に過剰なアーク熱が掛からないように配慮する。上板ねらいでは隙間メッキ層に過剰なアーク熱量が投入されるので上板を通じて隙間メッキ層を過熱、蒸気化させる。反面下板ねらいでは隙間メッキ層にアーク熱が多く掛からないのでメッキ層隙間からの亜鉛蒸気発生も限定的となる。よって、溶接強度上コーナ部溶け込みを満足させながら少なくともコーナ部より下板ねらいとすること。

 

2)横向き重ねすみ肉溶接071-01&072-01の各H1~H3参照)

H2* 横向き姿勢の場合は隙間メッキ層が鉛直方向に位置しているため、それらを溶かせば即蒸気化し、煙となって直上の溶融金属に侵入するに至る。よって、この場合の狙い角への考え方は隙間メッキ層を直接狙うことを避ける。すなわち垂直線から小さい角度設定の狙いは避けるべきで、「隙間を覗き込むような角度設定」は好ましくありません。この場合は直接隙間メッキ層を狙いにくい垂直線より45°以上の設定が望ましい。

 

3)立向下進重ねすみ肉溶接071-01&072-01の各V1~V3参照)

V1* 立向き下進溶接になると、亜鉛蒸気は煙となって上方に昇る。これら煙を溶融金属に吸い込ませたらブローホールの発生となってしまう。そこで、吸い込ませないために後退角5~20°程度の範囲で設定することをお勧めする。亜鉛蒸気の煙を上方に昇らせ、溶融金属を重力で下方に置くことによってブローホールは避けることができる。これらの考え方は油脂分付着の普通鋼板の溶接にも応用ができる。なお、後退角が大きすぎるとノズル内にスパッターが落下、付着するので大きな後退角は取りにくい。

以上

№ A072

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