アーク溶接 第50話 溶接条件の選定 考え方(3)  担当 高木柳平

2016年04月18日

  「溶接条件の選定にあたって必要な予備知識、事前準備」に関し前話より続けます。

-4 パック巻きワイヤの設置場所
 
多くの皆様の溶接工程を見学してまず目に付くのがパック巻きワイヤを何とか溶接工程の同一遮光カーテン内に設置しようとして窮屈なワイヤ引き出しとなっている場合が非常に多いことです。窮屈な設置場所ではアークロボットの動作に伴って1次側コンジットチューブの屈曲が激しく、ワイヤの引き出し荷重が大きくなり、送給性、ワイヤ線ぐせに悪影響を及ぼします。この場合同一工程内に設置することに拘ることなく、パックの置き所を考慮し対応を図ってください。溶接工程の隣同士でパックを入れ替えるなどもひとつの方策です。

-5 溶接法(CO2短絡・グロビュール、マグ短絡・スプレー、パルス溶接)の選定
  最近では溶接電源の進展、シールドガスの多様化とガス種切り替えによりCO2⇔マグガスおよび短絡移行⇔パルス溶接の交互変換が可能になり、また夫々のアーク特性も細部にわたって任意に設定、制御が可能になりました。サイリスター機全盛の過去を経験しているものからすれば夢のような話です。短絡移行溶接一筋で全溶接工程を押し通そうとすると無理があったり、この部位だけはパルスマグ溶接を行おうなどの発想は企画されるべきです。また1本のビードについてもスタート時のスパッター発生を極力抑えるために特殊溶接機をスタート専用に適用し、その後はパルスマグ法につなぐなどの実行もなされているのが現状です。品質維持、手直しゼロの観点から多様化を目指すのもひとつの考えです。

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-6 アークロボットとトーチケーブル方式
 
従来のアークロボットはトーチケーブルが外部取付け形になっており可動範囲は広いが過度なケーブルの搖動によるワイヤ線ぐせに課題を残しています。因みに外部取付け形トーチのコンジットを手に取って振らしてみてください。チップ先端のワイヤが大きく踊り、動くことが観察できます。ケーブル内臓ロボットの登場によりケーブルの過度な搖動が抑制でき、線ぐせ不良はかなり緩和できました。しかしここで留意して頂きたいのはケーブル内臓ロボットでも自己の手首動作でトーチ狙いは機械的には狙い位置決めは可能ですが、ワイヤ線ぐせは改善できません。溶接ワイヤはΦ1.2ワイヤで通常1mm2当たり85~130kgfと引張強さが大きく、トーチの手首動作に容易に追随できるほど軟質ではありません。そのため手首動作で捩じれが大きくなれば跳ねます。よって他のアークロボット同様ワイヤ線ぐせ対策を設備立ち上げ時から実施して下さい。ロボットメーカでは送給装置入口側に取り付ける3点矯正器がオプション部品になっていますが、標準取付け品として当初から装着することが賢明な策となります。
 

-7 トーチの耐久性を考える
  アーク溶接ロボット設備の稼働率はトーチの耐久性がその鍵を握っていると言っても過言ではありません。とくにパルス溶接機に供する溶接トーチには耐熱性が要求されます。
  耐熱性に心配がなければ溶接速度150~180cm/minも実現できるし、パルス溶接の高能率を活かすことが大切です。空冷ロボットトーチの限界電流は、使用率にもよりますが高々250A~270Aです。300Aを越えるとどうしても水冷トーチに依拠せざるを得ません。水冷トーチの構造はチップを取り付けるチップボディーと称する部品を水冷化することを基本とし、ガスノズル迄水冷を施せば耐熱性は一段の向上がみられます。しかしトーチ構造が複雑かつ大型になり、水漏れ頻度も増加します。なお、水冷性能を左右するものに冷却水循環装置の性能がありますが復水(戻り)温度が25℃程度を越えないことが条件となります。

 

  以下、次話に続けます。

以上。

 

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