品質管理技術 第10話 工程の保証度評価 担当 津守正己

2015年07月13日

 前回までの話しの中で「工程の保証度」という言葉を何度か使ったが、今回はこの「工程の保証度」について少し詳しく考えてみよう。

 ものづくりのプロと呼ばれる人が工程を見た瞬間に「これはダメだ! 工程の保証度が低すぎる!! 不良が出るのは当然だ・・・」と、ご指摘されるのを見て・・・ この人は何をもって保証度の高低を評価し判断しているのか? と興味を持った。

 

Ⅰ 工程に人が介入すれば保証度は低いのか?

 一般的に人の手作業よりも全自動化された工程の方が保証度は高いと思われるが、大した道具も使わず殆ど昔のままの姿でものをつくっている人間国宝と呼ばれるような名工の手作業をみて保証度が低いとは見ないだろう・・・ それは何故か?

 以前、テレビで見たが刀鍛冶が焼戻し温度800℃±2℃を温度計も使わず鋼の赤い色で判断、サーモグラフィで確認すると何とその差は僅か1℃!

  これは永年の修行でごく一部の人のみが身に付けた技であって、1/1000㎜を旧型の旋盤で削り出す人も同様に手作業だからといって保証度は低いとは限ら ないのではないか。しかし、現在の企業では数千人の社員の中に名工と呼ばれる人は1~2名おれば良い方。また、数年かけて技を磨いてからものづくり現場へ 投入する程日本の企業に余裕は無い。

 

Ⅱ 即戦略(新人)の時代での保証度確保

 設備(道具) × 環境 × 人 で保証度は成立する

 

 <設備>

 ●工程能力が検証されている

 ● 定期的にPM(preventive maintenance:メンテナンス、予防保守)されている

 ● 異常があれば停止する

 

 <環境>

 ● 職場の4S(整理・整頓・清掃・清潔)、最低でも2S(整理・整頓)

 ●適正な明るさ(全自動なら不要)

 ●適正な室温、雑音(集中力の維持)

 

 <人>

 ●作業訓練されている(最低1万回)

 ● 製品について教育されている(機能・品質)

 ● 異常処置の決め事と定期的な訓練実施

 

  上記は、一般的な考え方で実際には製造する製品・要素作業・生産量などによって保証度の評価項目と判断基準は違ってくる為、工程別に保証度評価基準を構築 する必要がある。この評価項目とその基準を考える事によって逆に、こうすれば保証度が1ランクアップするという改善策が見えてくる。これによって人の能力 も向上していく。

 

要素作業別保証度評価の例 A:ナット溶接

 ①  ワークセット作業
 手作業よりもパーツフィーダー使用の方が保証度レベルは高い(位置決め、裏表識別検知があればより高い)

 ② ナット供給(セット)
 手作業よりナットフィーダー使用の方がレベルは高い(ナット溶接穴以外をカバーしていればより高い)

 ③ 溶接
 当社のナットテスターを使用していれば最高レベル(裏打ち、ナットサイズ違い、芯ズレ等を検知し異常があれば通電しない)

 ④ 収納
 バラでポリケースに投げ込むより専用の収納箱に方向を決め入れた方がレベルは高い(数、キズ防止、誤品等々)

 

要素作業別保証度評価の例 B:アーク溶接(ロボット使用)

① ビードズレ
 原点確認をサイクル毎に行っていれば保証度は高い(発生防止で満点)
 出来た製品をオペレータが目視でビードズレを確認していてもレベルは低い(人はミスをする)。
 目視でなくイメージセンサー等で確認し、NGならライン停止をする場合は保証度が高い(流出防止で満点)。

 

 これらの保証度のレベルは、レベル5(最高)~レベル1(最低)の5段階評価が望ましい。

 以上の様に要素作業もしくは不良モード別にどうすれば保証度がアップするのか現地・現場で改善する事により全自動設備でなくとも保証度は確保できる。

 

 人に関しても計画的教育と定期的な作業観察を実施し、決め事をしっかりと守る習慣を維持しておくことが重要です。(ベテランほど良かれと思って標準作業を飛ばす確率が高い)

 

Ⅲ 最後に

 不良発生するパターンは専任者が急に休み、班長などが工程に入った時が殆ど、日頃から数人のチームで工程間をローテーションし1人で数工程をこなせる訓練をしておく事も大切。

 

№ Q010

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