アーク溶接 第11話 溶接ワイヤの発達(4) 「ワイヤ径」に関する基礎知識 担当 高木柳平

2015年02月09日

 「溶接ワイヤ」に関係する項目を4つに分類し図に示します。その中で、今回は紙面の都合で項の「基礎的知識」について説明します。

A011-01
▲ 図011-01 (図をクリックすると拡大表示します)

 

 アーク溶接においてワイヤは溶融し母材に移行しますが、それらの発熱はI2×R(1秒当たり)で表されます。ここでIは溶接電流(A)、Rはワイヤの抵抗(Ω)です。一方、ワイヤの抵抗Rは比抵抗率ρ(Ω・cm)およびワイヤの長さL(cm)に比例し、ワイヤの断面積S(cm2)に反比例します。要するにワイヤ径が細いと抵抗が大きくなります。ワイヤ送給速度を一定とすると溶接電流は細径ワイヤの方は電流が低くなり太径ワイヤでは電流が高くなります。また、溶接電流を一定とすると、細径ワイヤの方が、太径ワイヤに比べてワイヤ送給速度(cmmin)が速くなることがわかります。

 次にワイヤ径は通常Φ1.2を基準とします。1.2より小さいサイズのものを細径ワイヤと称し、太いものを太径ワイヤと呼びます。しかし、Φ1.2以下になぜΦ1.0、0.9、0.8と0.1mm置きのワイヤサイズが適用されているのか疑問に感じませんか? 背景には、ワイヤの溶融速度(単位時間に溶融するワイヤ重量)は電流密度(単位面積当たりに流れる電流)に比例すると 言う事実があり、一定電流を流すとワイヤの断面積が大きい(小さい)時は電流密度が小さく(大きく)、溶融速度も低く(高く)なります。これらの関係から ワイヤ断面積に着目することが必要で、Φ1,2、1.0、0.9、0.8の径順に断面積比は36、25、20、16とほぼ等差的に小さくなっています。ま た、太径側をみるとΦ1.2、1.4、1.6の径順に断面積比は36、49、64とほぼ等差的に大きくなっています。この様な考えでΦ1.4などの中間サ イズ径は設定されたのです。

 ワイヤ径はワイヤ送給性などの取り扱い面からも検討が必要になりますが、ワイヤの有する抵抗、ワイヤ断面積、電流密度、ワイヤ溶融速度、溶滴移行などの面から考慮して選定することが求められます。これらの基礎知識を正しく持ってアーク溶接技術に対応して頂ければより確実な判断、評価を行うことができます。

 

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